スカラベ（フンコロガシ）は、古代エジプトでは命の根源とみなされる太陽をころがして、朝～昼～夜～朝と巡らせる神聖な主として崇められ、永遠の命、幸せを祈るお守りなどとして永遠の幸せを祈るお守りなどとして造形されていました。

古代エジプトファイアンス技法の再現の試みで今回スカラベを造形しブローチにしてみました。

　古代エジプトファイアンス（Ancient Egyptian Faience）は、約6500年前にその製法が見いだされ、ラピスラズリなどの貴石に似た風あいの造形物が作れることから護符や小像、ネックレスなど、副葬品としてもたくさん発見されています。しかしながら、ガラス製法が発見されたためか紀元後2世紀頃からはエジプトで作られることはなくなってしまったようです。

　いくつかの製法が考えられていて、その再現をめざして研究がなされていますが、当時の製法が明確に解明されたとは言えない状況です。　当工房ではこの古代エジプトファイアンスに独特な特徴～ガラスに比べて軽く、割れにくい。比較的低温で焼成することができ、造形物の表面が自動的にガラス層で覆われる　など～　に興味をもち、その技法の再現を試みています。

　古代エジプトではピラミッドなどを作るのに石材を銅製の道具で切り出していました（鉄器がまだ発見されていなかったため）。その石粉と銅の酸化物が窯に付着したアルカリ分やカルシウム分と混合して焼かれたとき、たまたま鮮やかな青色の着色物が見られたのがきっかけと言われています。これに基づくのが白華技法と言われるもので、原料を混合し水で練って乾燥させると、造形したものの表面にガラスの原料となるアルカリ成分などがしみ出して白い粉状になります（白華現象）。そして900℃程度と陶磁器などを焼くのに比べると低温で焼成することで造形物の表面がガラス質の層で覆われます。色は金属酸化物の種類を選ぶことで変えることができます。

　再現実験では、関連論文などを参考に、条件を変えて何度も試作しています。鮮やかな着色はわりと簡単に得られるのですが、うまく造形したり、きれいな表面形状にすることに苦労しています。粘土を使った陶磁器と違って、それよりは粒の粗い石粉を用いているため可塑性、つまり粘りがなく成形は困難です。

　ある程度造形表現ができるものが作れるようになってきましたので、試作品の中からわりと良いものを少しずつ出品していきたいと思います。なお、エジプトのおみやげや、博物館のショップで古代ファイアンスのイミテーション品が販売されていますが、私の確認できた範囲ではいずれも陶器やプラスチック製のものでした。

　製法技法等については、
（「古代エジプトファイアンス技法の試み」で検索してください）


　製法：古代エジプトファイアンス再現技法（白華技法）
　　　　　表面がガラス質で覆われた石質素材
　大きさ：長さ　27～32 mm、幅 27～32 mm、重さ　10 g 程度

一品一品手作りのため形状や色合いに違いがあることをご了承お願いいたします。
（今回の提供品は1枚目の写真の2体の内からの一つになります）

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